平成28年9月25日(日)13:00〜13:30神奈川県自然環境保全センターのレクチャールームにて平成28年度野生動物救護ボランティア修了式が行われました。今年度は42名修了し、25名の方が当日、公益社団法人神奈川県獣医師会 北澤浩一副会長より受け取りました。
皆様、おめでとうございます。
野生動物救護ボランティアはこれからが始まりです。皆様のご活躍に期待しています!!
赤木先生の研修報告
今回はボランティア講習会の修了式の後に赤木智香子先生をお招きして「日本における野生動物救護の現状とボランティア活動の実際」というお話を伺うこととなりました。
赤木先生は大阪府立大学農学部獣医学科卒で、米国ミネソタ大学で修士号を取得、猛禽類の消化器生理学を研究しその後ミネソタ大学猛禽センターで研修医として勤務、環境教育にも関心を持たれました。
先生のテンポの良い話し方で始まり、まず野生動物救護の現状を見るには山に登ってみようという話から始まりました。
高いところから救護とその周辺を見てみるといろいろなことが分かってくるということです。日本の野生動物救護は行政の5年ごとの見直しがあり鳥獣保護管理法、種の保存法等の見直し、これには救護事業も含まれるということです。
傷病個体の救護は生物多様性が軸になっている。生物多様性とは?との話では生態系の多様性、種間の多様性、種内の多様性などがあり、またそれらからサービスを受けているというお話があり、水や食料、気候、精神的充足、酸素形成など人類の生活に密着していることばかりです。生物多様性は生態系のバロメーターでもあり、現在それらが危機に接しているというお話です。危機とは第1に開発などによる種の減少絶滅、第2に里山等により手入れ不足、第3に人間により持ち込まれたものによる危機、第4に地球環境の変化による危機などの話がありました。
生物多様性保全の方策には190か国とEUが締約している。日本では35都市、14政令指定都市で策定済みです。神奈川県もH28年3月に策定。
神奈川県では里地里山の保全、野生動物の管理、人と野生動物の棲み分けを掲げています。
野生動物を取り巻く状況としては絶滅危惧種が多く、人間との棲み分けが崩れてきている、増えすぎた結果、管理が必要になってきた(シカ,イノシシなどがあげられる)。又最近エキゾチックアニマルの増加や外来動物の輸入などで野生動物をペットのように感じてしまう(餌付け問題などを引き起こす)。救護の果たしてきた役割として、傷病動物の受け皿を作る、救護データーの蓄積と活用、鳥獣保護思想の普及啓発と環境教育など。
市民ボランティアの救護へのかかわりとしては里親制度(傷病鳥獣を放野まで預かる、放野できない個体を終生預かる、保護センター等へ通って傷病動物の世話をする、環境教育に携わる、民間の救護施設を作る、リハビリをする)などの話が続きました。
救護の利点としては、傷病野生動物の受け入れ場所の提供、救護された動物は救命、放野ができる、得られる経験を希少種に活用できる、学生に訓練機会を提供できる。
欠点としては、救護には費用が掛かりすぎる。救護個体のほとんどが一般種である。
客観的に関わることが難しくなる。感染のリスクがある。資金不足で他の保護団体と資金の取り合いなど。
又救護の抱える問題としては責任の所在が明確でない、開業医の負担が大、公的な資金不足、共生の専門官の不在、データーの活用の不十分、希少種の安楽死が認められていない。
感染対策の不十分、知識技術の不足、市民が預かることによる感染症の懸念や観念的ペット化などです。
又愛護と保護の混同についての話では、愛護は1頭1羽の命を守ろうとする。保護は個体群に注目して種の保存を守る。愛護という言葉はペットに使う、野生動物には保護という言葉を使うという話もされました。
安楽死のマニュアルは必要という話が出ました。ペットは病気をしても手元で一生看病してもよいが、野生動物はケガをしながら狭いケージに閉じ込めて一生飼って良いものではなく、それらのエサ代をこれから放野等できる個体に使ったほうが良いのでは。この話については行政という中だけでやっているとなかなか難しいものがあるのではというお話です。
後は海外の救護現場からは赤木先生のいらしたミネソタ大学猛禽センターでのお話がありました。海外では企業などから億単位の寄付があるとのことです。ミネソタ大学では年間予算が1億4千万で予算6割が寄付とのことです。日本の現状では無理な話かなと思います。またそこにいるスタッフやボランティアにもしっかり訓練が必要なライセンスを持っている。その他のボランティア活動としては普及啓発運動や、傷病動物の輸送、イベントの手伝いなど保全センターでも行っていることと重なりことも多々ありました。
これからも山に登って考えようと、アンテナを張って知識情報を取り込み広い視野で考えて行動していく必要性を話されて本日の講義は終わりになりました。
平成28年度 野生動物救護ボランティア修了式の報告