神奈川県自然環境保全センターに保護される野鳥の数は年間約500羽です。
保護原因の主な内訳は、巣からの落下と建物への衝突が約20%、ネコによる被害が約10%です。毎年、50~60羽もの野鳥がネコに襲われて保護されて来ることになります。
ネコに襲われて保護された野鳥の約7割は回復できずに死亡してしまいます。下の写真のキジバトのように目に見える傷だけではなく、ネコの鋭い爪による傷は目では見えなくても野鳥の体の奥深くまで達していることがよくあります。また、実際の傷だけではなく、ネコに襲われたことによるストレスによって野鳥は呼吸がうまくできなくなります。呼吸がうまくできなくなることは野鳥にとって致命的で治療を施してもなかなか回復できません。なんとか一命を取りとめて傷が治っても、野生復帰できるまでに回復できるのは3割にも満たなく、野生復帰できずに永久飼育になる野鳥も少なくありません。他の保護原因にくらべてもネコに襲われた場合、死亡率は高く、野生復帰率は低くなります。
ネコが野鳥を襲うのは自然なことではないか?
と疑問に思った人もいるかと思います。確かに自然界には食物連鎖というものがあり、動物同士の食う食われる関係で環境が成り立っています。
しかし、ネコはもともと人間に飼育されているもので、野生動物ではありません。チーターが獲物を襲うというような場合とは別物として考えなければならないのです。
野鳥とネコがしあわせに暮らすためには!?
これまでに保護されてきた野鳥の種類は44種類。その内上位5位を占めるのはスズメ、ツバメ、キジバト、ムクドリ、ヒヨドリなどの私たちの身の周りでよく見られる野鳥です。このことからもネコの飼い方を変えることで被害を防げることがわかります。
また、数は少ないながらもサシバやチョウゲンボウなどの猛禽類や、アオサギやオオセグロカモメなどの大型水鳥も襲われています。これらは建物への衝突や釣糸・網に絡んで身動きが取れないところを襲われたと推測され、人間の生活による複合的な影響と言えます。また、これらの中には神奈川県内では貴重な種もあり、ネコによる被害の深刻さがうかがわれます。
野鳥がネコに襲われないようにするには、外にいるネコを減らすことが一番です。そのためには、次の3つを行っていくことが重要です。
≪ネコにとって良いこと≫
その1.ネコを外に出さないことで交通事故や感染症を防止します。
その2.ネコを捨てないことで野良猫が増えるのを防止します。
その3.野良猫を地域ネコとして扱うことで外でのネコの繁殖を防止します。
※地域ネコ(ちいきねこ)とは・・・
特定の所有者がいないネコで、そのネコが住みつく地域のネコ好きな複数の住民たちによって世話、管理されているネコのことです。地域ネコは、餌をやる場所が決められ、糞などの排泄物の処理、本来飼い主が受けるべき苦情の処理は地域住民が協力して行います。また、繁殖しないように去勢・避妊手術を行って身体の特定の箇所に目印をつけるなどの管理・保護がされています。地域の住民から見て、地域ネコは野良猫とは区別されます。
野鳥にとっても、ネコにとってもしあわせな環境にできるようあなたの家のネコ、そして家の周りのネコの飼い方をもう一度考えてみませんか?