はじめに

私たち人間は生活をするために沢山の自然を犠牲にしてきました。山を削り森を切り開き海を埋め立てて野に棲む動物達の住処を奪ってきました。また、動物たちには私たちが無意識に作り出した危険な罠に陥ろうとしています。

例えば、山に棲むタヌキは生活の場を奪われ人間の住むすぐそばで生活をしなければ生きていけなくなっています。動物たちの生活道路・・・獣道を横切るように道路が敷設されタヌキが道路を横切る事が多くなると自動車とぶつかり交通事故を起こしてしまいます。

捨てられた猫に襲われたり、釣り人が残していった釣り糸や釣り針に絡まったり飲んだりして傷つく野鳥たちもいます。建物のガラスに衝突して怪我をする野鳥たちもいます。心ないカメラマンによって子育てをしなくなった野鳥もいます。工事のため巣が取り払われてしまうこともあります。

そのような野鳥に出会ってしまったら、あなたならどうしますか?

一つ気をつけなければいけないことは傷ついた野鳥が人間のせいなのか、それとも自然の仕組みの中で起こったことかを判断をしなければいけないことです。

野鳥たちは過酷な生存競争の中で生きています。生きる力が弱いものは強いものに食べられます。それを可哀相に思うことは間違いではありませんが、野生に生きる動物たちはそうした生存競争で時には他の生き物を食べ、あるときは食べられ命が受け継がれていることも同時に理解する必要もあります。

「野の鳥は野に」これは日本野鳥の会の基本理念です。野鳥はペットではありません。保護をすることが野鳥たちにとって幸せなことでは無いかも知れません。このことを常に念頭に置いて野鳥たちと仲良く暮らして行くことが大切です。

HINT!:基本的に救護目的であっても許可無く野鳥を保護することは出来ません。出来るだけ早く役所、保護センターなどの施設へ連絡をして下さい。

HINT!:誤った保護は野鳥にとって大きなお世話です。本来、大人になれるはずの鳥を殺してしまうかも知れません。

もし、野鳥の雛を保護したとすると、巣立つまで2時間ごとの餌やり、役所への届け出、餌の調達、など保護者に多大な負担をかける事になります。

その負担を考えると、単純に迷子だと決めつけず時間をかけて観察することが肝心です。

あくまで雛の保護は最終的な手段だと考えてください。

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参考資料

野生動物救護獣医師協会発行「野鳥をたすけるはじめの一歩」

文永道出版 野生動物救護ハンドブック編集委員会編「野生動物救護ハンドブック」

B・H.コールズ著「バード・クリニック・プラクティス」

野生動物救護研究会「野生動物救護の症例144」

special thanks:神奈川県自然環境保全センター 加藤千晴様